心身諸機能の低下と共存する工夫
人間工学専門家●石川文武
高齢化に伴って、心身諸機能が低下してくることは避けられません。しかし、低下を抑制する工夫や、体づくりをすることによって、重労働でなければ、事故に遭う確率も低下させることができます。
高齢化を認識するのは、体力、視力、聴力の低下と腰痛の発症です。腰痛は、後天的なものと先天的なものがありますが、背筋と腹筋を鍛えること、不自然な姿勢で物を持ち上げることを避けることが一番です。どんな重さの物でも腰を落として膝を曲げ、良い姿勢を保ちながら力を入れることを習慣付けましょう。
加齢に伴って、疲労の発現が遅くなり、回復にも時間がかかるようになります。疲れを感じなくても作業後は多くの時間を疲労回復に充てましょう。つまみを取りながらの適量のアルコール摂取、適温での入浴は肉体疲労の回復に役立ちますが、農薬散布作業後のアルコールは禁止ですし、週に1度は休肝日を設けましょう。精神的な疲労回復には、読書などが良いでしょう。
休息によって疲労が回復できるときは良いのですが、疲労が取れず体のあちこちに愁訴を感じるときは、どこかに異常が起きている信号です。健康管理は「自助」の筆頭です。「つい忙しくて」「自覚症状があるけど医師に宣告されるのが怖い」など、後ろ向きの理由で健康を損ねることが中年以降の方の特徴です。定期健康診断を1年の予定に組み込みましょう。
疲労回復と体力維持にはストレッチ体操が有効です。1日10分のラジオ体操と、ストレッチ体操を行うことが大切です。ストレッチは、弾みをつけて筋肉を伸縮させるのではなくゆっくりと行うのがお勧めです。
高齢化による体力低下は徐々に進行するので本人は気付きにくいかもしれませんが、周囲の人から見れば、ばれてしまっています。無理をせず、自分に合った農作業に取り組み、事故を起こさないように行動してください。
※JA広報通信2021年1月号より