寒冷期のハウス内作業の安全
人間工学専門家●石川文武
ビニールハウスやガラス温室では、正月や寒期向けに作物が栽培されます。ハウス外では気温・湿度共に低く、防寒着などを着込みますが、ハウス内部は太陽光や暖房などで暖められ、外気とは10度以上の温度差があり、湿度も高くなっています。このような環境は体調を狂わせることも多いようです。環境の異なる場所への頻繁な出入りを減らすために、メインの出入り口近くには副室を設け、着替えや収穫物の調製などをすると良いでしょう。若干の栽培面積の減少とはなりますが、体調を狂わせて医療費を支出したり適期作業を逃すことに比べれば問題にはならないでしょう。
冬季にはハウス暖房を行ったり、今は少なくなっていますが、炭酸ガス発生機などを使用することもあります。適切な換気を心掛けましょう。
病虫害防除も大切な作業ですが、農薬は低毒であっても無害ではありません。第三者が知らずに立ち入ることのないよう、出入り口を施錠するとともに、「農薬散布につき立ち入り禁止」という貼り紙をしましょう。病虫害防除と共に、誘引や芽かきも大切な作業です。作業がしやすいような株間、条間を設定しましょう。1本の主幹から何本の枝を伸ばすかによって、作業のしやすさが変わってきますし、適切な枝数にすれば、実のなり方も多くなることが知られています。作業姿勢が楽になるような仕立て方も大切です。作物に合わせた栽培方法を選択しましょう。
収穫時の作業姿勢も快適に行えるように考えましょう。露地栽培の場合には、最低着果位置をなるべく高くすると腰曲げが少なくなります。イチゴなどの地際での作業が多い場合には、収穫時に作業台車の利用やアシストスーツの利用が疲労軽減に役立ちます。作物によっては高設栽培にすることも有効です。水耕栽培にすると、肥培管理も楽になるでしょう。
※JA広報通信2018年11月より